欧州工具メーカー　ドライバーって沢山あるけど何か違うの！？　パート②

2024.01.11

パート①のベータ社、フェロ社、ゲドレー社、PBスイスツールズ社に引き続き、パート②では
ヴィーハ社、ヴィッテ社、ヴェラ社の3社について、それぞれ代表するドライバーがもつ特色について紹介します。

記事の最後には、メーカーカタログには載っていない、グリップ寸法など、比較にて一覧でまとめています。
欧州ドライバー選びの参考にして頂ければと思います。

パート①を読まれていない方は是非、こちらもご覧ください。

欧州工具メーカー　ドライバーって沢山あるけど何か違うの！？　パート① - 世界のプロツール｜トラスコ中山

Beta（ベータ）、Felo（フェロー）、GEDORE（ゲドレー）、PBスイスツールズ（ピービー）、Wera（ヴェラ）、wiha（ヴィーハ）、Witte（ヴィッテ）の欧州を代表する工具メーカーのドライバーを徹底比較。

wiha（ヴィーハ社）

ヴィーハ社は1939年にヴェラ社やクニペックス社（プライヤーメーカー）が本社を構え、工具の聖地とも呼び声高い、ドイツ・ヴッパータールにて創業しました。
しかし、第二次世界大戦の戦火を逃れるように、現在はスイスやフランスとの国境に近い、南ドイツのショーナッハに本社を移転してきた工具メーカーになります。

日本でヴィーハ社を知っている方であれば、金属加工で使用する先端チップ交換用のトルクスドライバーメーカーとしてのイメージが強いと思います。工場・産業向け工具メーカーとして知られています。

しかし、本拠地の欧州では産業用にも広く販売していますが、ホームセンターやプロショップで見かける機会も少なく無く、職人さんやホームユース、DIY用など幅広いニーズがあります。
商品も今回紹介するドライバーだけでなく、ハンマー、プライヤーや六角棒など、ドイツの職人さんが手にしている機会を幾度となく見てきました。

そんなヴィーハ社からは絶縁ドライバーのエントリーになります。
この時点で「電気職人じゃないし、関係ないや！」と思った方、少しお待ちください。

私はヴィーハ社の工場を訪問した際、初めてドライバーが実際に絶縁コーティングされる工程、製造されたものが絶縁規格に適合しているか、1本ずつテストされる様子を目にしました。
その後の会社紹介ではヴィーハ社が、なぜ絶縁ドライバーにこだわって製造しているか？を聞く機会があり、なるほどなと頷いた事を覚えています。

現本社と3代目のWilhelm Hahn氏

ヴィーハ社として「最も安全な工具を提供する」ことを念頭にし、その答えが絶縁ドライバーであり、電気に関わる作業で使用するためだけの工具では無いという事です。
絶縁であることで通常のドライバーの上位互換として、絶縁性能を実装しただけであり、普通のドライバーとしてもドンドン使って下さい。ということなのです。

電気工事士の皆さんは、普段から絶縁ドライバーを手に取る事もあると思いますが、例えば普段は内装関係の職人として働くが、たまに配線なんかも触る必要がある。とか、DIYでちょっとした電飾・配線に挑戦したいとか。
仕事に合わせて、普通のドライバーと絶縁ドライバーの2本持ちするくらいなら、一番安全な絶縁1本で良くないですか？というのがヴィーハ社の主張でした。
これなら作業中に誤って、非絶縁ドライバーを電気作業に使って感電する心配も無く、これが「最も安全な工具を提供する」の意味でした。

もちろんガシガシ普段でも使えるよう、ヴィーハ社の絶縁コーティングは剝がれにくく、耐久性の優れる仕上がりです。

そして絶縁仕様で軸部がコーティングされていることにより、例えば寒冷地での作業において、むき出しの鉄部が少ないため冷たくなりにくい事や、絶縁工具はシンボルが赤色と黄色でデザインされており、目を引き探しやすい事も利点の1つとして挙げられます。
なんかドイツの国旗みたいで、ちょっとカワイイですよね。

ヴィーハ社のドライバーも握りやすさにこだわり、人間工学に基づいた疲労感を感じにくいデザインになっています。

グリップ全体が丸みを帯びて滑らかで、手全体がグリップに接しており、個人的に私の手に一番合うのもヴィーハ社のグリップのように感じます。

この人間工学に基づいたデザインについて、外部機関であるAGR（ドイツ：脊椎健康推進協会）からAGR認定にて優秀賞を受賞した世界で初めての工具メーカーになります。
ヴィーハ社のグリップ形状は外部機関にも認められ、医学的にも少ない疲労で長時間の作業が出来る事が証明されているのです。

商品紹介

WITTE（ヴィッテ社）

ヴィッテ社の創業は１７８５年と、ダントツで歴史を重ねてきたメーカーになります。日本は江戸時代です。歴史の授業で出てきた、伊能忠敬や杉田玄白が生きていた頃の時代になります。
２３０年以上存続しているメーカーですから驚きですよね。

そんな長い歴史を持つヴィッテ社ですが、創業当初は裁縫針の製造を行っていました。

歴史あるメーカーですが、手作業工具メーカーとして知られるようになったのは、１９５０年ごろと割と最近になります。ヴィッテ社は手作業工具の他に、自動車のパーツなど板金加工も施すメーカーであり、世界中に１．１万人の従業員を擁する巨大グループへと成長しています。金属への焼き入れ技術、精密な先端加工を得意とし、欧州では手作業工具のOEM供給なども幅広く展開しています。

これから紹介する商品（MAXXシリーズ）は
依頼元の高い要望に応え続けたOEM供給によって、長年培ったノウハウが詰まったドライバーとなります。

ヴィッテ社のドライバーで他社との大きな違いは、マイクロファイバーが接着されたグリップになります。
これによって油膜を浸透さて摩擦を生むので、油のついた手でも滑りにくいという最大の特長があります。

マイクロファイバー自体が髪の毛の100分の1の細さで
マイクロファイバー製のクロスやタオルは、「抜群の吸水性」がある事は耳にするかと思います。
それと同じで、滑る油膜を吸収しながら、摩擦を生みだすことで非常に滑りにくいグリップとなるのです。

マイクロファイバーをグリップに接着させる技術に特許を持っており
簡単にははがれないのと、油が付いたら中性洗剤で軽く洗えば元通り。繰り返し滑り止め効果が持続します。

ヴィッテ社はハンドルのトライアングルシェイプにもこだわりがあり
第三者機関からエルゴノミクス認定※を受けており、疲れにくく握りやすい（トルクが伝わりやすい）、人間に手に合わせたハンドルが欧州で高い評価を受けています。

それと、こちらのトライアングルシェイプは先端サイズによってハンドル形状を最適に変えております。
サイズによって高トルクをかけたいのか？それとも低トルクで良いが早回しが求められるのか？
最適なパフォーマンスを引き出すために、サイズにあったハンドルを展開しています。

トライアングルシェイプはグリップの先端に近づくにつれて円形になり、早回しのサポートもしてくれます。

商品紹介

Wera（ヴェラ社）

既に説明不要なほど圧倒的な人気を誇るヴェラ社のドライバー。世界中で人気のあるドライバーメーカーで、ヴェラマニアまでが存在し、異常な熱気が感じられる工具メーカーです。

ヴェラ社の創業は１９３６年で手作業工具の聖地であるドイツ・ヴッパータールになります。

今回紹介するドライバー以外にも、コンパクトツールセットの“ツールチェックプラス”、スパナの“ジョーカー”シリーズなど爆発的なヒットシリーズを数々生み出しているメーカーです。

製品のほとんどをチェコで製造しており、ドイツで開発された商品が、真面目で器用な人が多いと言われるチェコ人によって丁寧に作り上げられています。
２０２０年に私も訪問しましたが、巨大な工場で働く人々はひたむきに仕事に向き合い、モノづくりに没頭していました。
その様子は「俺たちはヴェラの一員で、常に満足いく品質の工具を作るんだ！」という誇りや熱気を感じました。

さて、ドライバーの紹介に入りますが、ヴェラ社のドライバーを紹介する上で外せないのは、独特なグリップの形状でしょう。この形状はクラフトフォームハンドルと呼ばれ、ヴェラファンのあなたであれば、お馴染みのイラストかと思います。
ヴェラのドライバーが人気になり、ここまで愛されている理由にこの形状の紹介は避けて通れません。

クラフトフォームハンドルを握ってみると、親指～小指まで全ての指がしっくりとフィットしてくれ、ずっと握っていたくなるような感覚です。指を自然に握ると、全ての指が丁度良くグリップの表面にフィットする。そんなイメージです。
グリップは2種類の素材を使用し、黒色の硬質な樹脂が握り応えを与えてくれ、緑色のゴム素材が滑りにくいグリップ力を与えてくれます。

「エルゴノミック形状」「人間工学に基づいたデザイン」など、よく耳にしますが、ヴェラ社は１９６８年には既にこの形状を国際的に有名な、ドイツデザインセンターと共同で研究を開始しました。
世界に先駆けて人間の手に合わせた「エルゴノミック形状」のハンドルを完成させ、世界を驚かせています。　
ここからヴェラ社の大躍進が始まっているのです。

そしてブレード先端のレーザーチップ加工も忘れてはいけません。
クラフトフォームに続き、こちらのレーザーチップも特許を取得しヴェラでしか手に入らないのです。

レーザーチップはその名通り先端にレーザー加工を施し、表面をケバ立たせます。そのケバ立ちがネジ山を噛むことで、カムアウトしにくく舐めにくい仕様になっているのです。

レーザーチップは簡単な加工に感じますが、実はレーザー加減が非常に難しいと製造担当者に聞いた事があります。
レーザ具合が強すぎると高トルクをかけた際に先端が欠けやすくなるし、弱すぎたらネジ山を噛んでくれない。この絶妙なラインがヴェラ社のノウハウであり、長年ファンを虜にする品質の1つなのだと思います。

商品紹介

いかがだったでしょうか？
この記事がお読み頂いた方の、欧州のドライバー選びで困った際、一つの助けになれば幸いです。

各メーカーによってドライバーの特長が、大きく異なることがお分かり頂けたかと思います。
使用する方の主な用途（早回し？高トルク？）、手の形、指の長さや太さなど、それぞれ違いに合わせて、最適なドライバーがあるはずです。
また、メーカーの歴史背景なども知った上でドライバーを握ってみると、これまでとは違った握り心地を感じるかもしれません。

ここまで読んで下さり、本当に有難うございました。
記事を執筆するにあたって、各メーカーにアンケートを実施したところ、熱のこもった回答が届き、パート①の記事だけで納めきれず、パートを分けて執筆することとなりました。各メーカーの情熱が少しでも皆様に伝われば幸いです！

最後に今回紹介したドライバー７種、メーカーカタログにはあまり記載の無いサイズを一覧にまとめて紹介します。
こちらもドライバー選びのご参考にして頂ければと思います。